HIF-1とは
2019年にノーベル賞を受賞した研究で、幹細胞を活性化する物質『HIF-1(ヒフワン)(低酸素応答転写因子)』の働きが注目を浴びることとなった。
2019年『細胞の低酸素応答の仕組みの解明』で、米ハーバード大 ケーリン博士、英オックスフォード大 ラトクリフ博士、米ジョンホプキンス大 セメンザ博士ら3名がノーベル医学生理学賞を受賞しました。
この研究により、HIF-1という体内たんぱく質が、低酸素に応答して血液をつくる『造血幹細胞』を活性化し、赤血球を増やすことが解明されました。
酸素が少ない環境(高山など)では、赤血球を増やして酸素運搬能力を高める反応があることが知られていますが、低酸素環境で、赤血球を増加させるメカニズムに関連しているのがHIF-1です。
実際、腎不全にともなう貧血の治療に、このメカニズムが応用されて創薬がなされて、現在すでに治療に使用されています。
その他、 HIF-1は造血幹細胞以外の幹細胞も活性化することが明らかになっていて、この作用が様々な細胞の発生や維持、増殖、分化に役立つことが分かってきました。
実際、免疫細胞、心筋細胞への良好な影響が報告されていて、今後、様々な治療に役立つ可能性があり精力的な研究が継続しています。
また、幹細胞の活性化が細胞の増殖、分化に関係することから、皮膚の老化を抑制し、皮膚のきめや質の改善といった美容上の効果も期待されています。
(執筆)
東京医科大学
糖尿病・代謝・内分泌内科学分野
糖尿病・代謝・内分泌内科
兼任教授 小田原 雅人